有床診療所について

有床診療所とは?


有床診療所とは、19人以下の患者を入院させるための病床(ベッド)を持つ診療所を指します。

有床診療所が担う役割


小規模入院施設である有床診療所は、その小回りの効く体制を活かし、「地域医療難民」の受け皿として個々の患者さまに合った入院医療を提供してきました。そのため、ひとくちに「有床診療所」といってもそれぞれの病床が担う役割はクリニック毎、病床毎に実に多様です。

「有床診療所の病床機能分析」


有床診療所が担う役割は病院とは異なります。「地域医療構想」における有床診療所の有効活用を踏まえ、病床機能の分析がなされました。それが有床診療所の「5つの病床機能」「地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)と専門医療提供モデル」です。

有床診療所の5つの病床機能

1

「医療」と「介護」のつなぎ役。

病院からの早期退院患者の
在宅・介護施設への受け渡しとしての機能

「病院から早期退院を勧められたが、在宅での療養や介護は困難。介護施設への入居も難しい」。そんな時は「有床診療所」へ。一人暮らしの高齢者や親族が近くにいない方、リハビリ中だけれど通院が難しい、という方の受け皿になるのが有床診療所です。

病院治療後の療養や一般的な診療・在宅医療を提供する以外に、特殊な診療科や専門性の高い医療を提供する有床診療所もあります。内科の他に外科・整形外科・産科・耳鼻科・眼科などの入院手術や、透析も担っています。

2

多様な専門医療を提供。

専門医療を担って
病院の役割を補完する機能

3

いざという時の「駆け込み寺」。

緊急時に対応する
医療機能

24時間稼働しているので、夜間や休日といった診療時間外にも入院を含めた医療を提供することが可能です。地方やへき地に於いては、その地域の緊急医療の「駆け込み寺」として機能します。 

在宅医療や介護施設においては、患者さまや入居者の病状が急変した場合すみやかに医療が提供でき、ベッドの確保ができることが重要です。「有床診療所」はこうした事態にも対応可能です。

4

在宅医療の避難場所(シェルター)

在宅医療の
拠点としての機能

5

「最後」まで寄り添う機能。

終末期医療を
担う機能

愛する家族を看取ることは、精神的・肉体的にとても大変な事です。日々絶え間なく変化する終末期の身体的ケアを入院医療で支えることにより、ご家族は最後まで余裕を持ちながら寄り添う事が出来るのです。

地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)と専門医療提供モデル

地域包括ケアモデル
(医療・介護併用モデル)と
専門医療提供モデル

それぞれの有床診療所によって、担う役割や機能は異なります。 「地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)」と「専門医療提供モデル」という二つのモデルから それぞれの特徴を見ていきます。

地域包括ケアモデル専門医療提供モデル
主に地域医療を担う
有床診療所
概要主に専門医療を担う有床診療所
医療+介護サービス
を提供
提供するサービス専門的な医療サービス
を効率的に提供
相対的に高い入院患者さま
の年齢
相対的に若い
医療と介護の
両方が必要な高齢者
入院患者さま
の特徴
専門的な医療を
必要とする患者様
相対的に長期在院日数相対的に短期
入院料等の割合
が高い
総点数における
診療医行為の内訳
検査・手術の割合
が高い
入院料 等主な
入院診療報酬
手術料
稼働率は高い病床稼働率必ずしも
高くはない
内科・外科診療科の
代表例
産科・眼科・耳鼻科

※整形外科はこの2つのモデルの両方を担っています。

有床診療所を利用するメリット

有床診療所を利用するメリット

有床診療所を利用することには、利用者さまの立場によって得られる様々なメリットが存在します。(+マークをクリックで詳細が展開します)

  • 患者さまと
    そのご家族の皆様にとってのメリット
    入院基本料が抑えられます。

    高度な医療を要しない入院医療(慢性期医療や終末期医療、小手術等)を受ける場合は、病院よりも、入院基本料の安い有床診療所の活用で経済的負担が軽くなります。

    「かかりつけ医」だから安心です。

    外来や在宅、介護サービス(有床診療所が提供)を受給中の病状急変時、直接かかりつけ医のクリニックに入院出来る為、患者様やご家族様の肉体的負担が軽減出来ます。

    介護施設よりも安心した看取り。

    常勤医が在籍する為、有床診療所は介護施設よりも安心した看取りを実現出来ます。

    24時間稼働しています。

    24時間稼働している為、緊急時の対応に適しています。

    いろんな使い方ができます。

    ショートステイやレスパイト入院にも活用できます。

    行き場のない患者様の受け皿になります。

    有床診療所は「病院から早期退院したが、自宅療養が困難」「リハビリが必要だが通院が困難」といった行き場のない患者様の受け皿となります。

    格安でリハビリが受けられます。

    急性期病院からリハビリの為の転院を求められた場合、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士らが多く在籍する「リハビリ強化型の有床診療所」では、病院の回復期リハビリテーション病棟と同様の医療を、より格安で受けられます。

  • 地域医療構想実現を目指す医療行政の
    みなさまにとってのメリット
    医療費削減に貢献

    高度医療を要しない入院医療(慢性期医療・終末期医療・小手術等)の担い手を、入院基本料の高い病院ではなく、入院基本料の安い有床診療所に委ねて頂く事で、持続可能な地域医療の実現に不可避な「医療費削減」に、有床診療所は無理なく貢献出来ます。

    病床の機能分化と連携を支えます

    急性期治療が終了し、高度な入院医療を要しない患者様を有床診療所が受け入れる事により、急性期病院は本来求められている重症患者様への治療に専念できます。

    貴重な分娩施設

    日本の分娩の約半数は有床診療所が担っており、特に地方においては数少ない貴重な分娩施設であります。

有床診療所と地域医療

多くの有床診療所では、1人のドクターと少人数のスタッフで地域の方々を診療し、必要に応じて入院治療を施します。患者さまのご家族やご近所さんが通うような「医療者と患者との顔の見える関係」があるのが特徴です。軽症入院やレスパイト、在宅看取りの後方支援等、すべき事がたくさんある在宅医療において、小規模ならではのスピード感と柔軟性を併せ持つ有床診療所は非常に有用な存在です。「気軽に頼れる地域の診療所」、「困った時の駆け込み寺」として、有床診療所は地域の医療を支えています。

患者さんと
ご家族、
地域のために

患者さんと ご家族、 地域のために

これからの
和歌山県に
必要な医療

これからの 和歌山県に 必要な医療

全国的な社会の高齢化は、和歌山県も例外ではありません。現状でも「退院後に療養できる場所がない」「自宅で介護してくれる人がいない」といった方は多く、こうした在宅医療に関する問題は今後ますます増えていくと予想されます。「医療」と「介護」を繋ぐ「有床診療所」の存在とその役割は、これからの和歌山県には欠かせないものとなるでしょう。ところが、経営環境の厳しさや後継者不足が原因で、有床診療所の数は減少の一途を辿っているのです。

ネガティヴな話題ばかりではありません。2017年8月に全国有床診療所連絡協議会会員2646施設を対象に実施した「入院患者満足度」の調査結果で、医師による診療・治療内容に「非常に満足」「満足」と回答した患者さまはなんと86.7%、医師以外のスタッフの対応に関しても83.7%に上り、施設や食事等の満足度も高水準を記録しました。施設が新しくなくとも、医療者と患者さまとの間に信頼関係が築けていれば満足して頂ける事が証明されたのです。この結果は全国で奮闘している有床診のスタッフを勇気づけるだけでなく、今後の地域医療再生の重大なヒントとなるでしょう。

有床診療所の
満足度

有床診療所の 満足度

「有床診療所」にこだわる理由

かかりつけ医
としての責務を
全うするために

かかりつけ医としての責務を全うするために

病床(入院)があることにより、医師は入院患者さまの病状に対応するため24時間/365日拘束されることになります。病院とは異なり診療報酬上の評価も少なく経営はなかなか安定しません。「そこまでしてなぜ、大変な有床診療所を続けるのか?」と無床診療所の医師に言われることがあります。

無床診療所では、かかりつけ患者さまの病状急変に対しあまりに無力です。かかりつけ医としては、患者さまの病状急変時に入院を受け入れられる病床を常に確保しておくことが必要だと考えます。病状不安定な患者様を十分な体制がとれないまま自宅に戻すのは、かかりつけ医として無責任です。

「なぜ、大変な有床診療所を続けるのか?」
その答えは「地域医療を守るかかりつけ医としての役割を責任を持って全うするため」なのです。

大病院においては、現場の意見を経営システムに反映するために経営陣の了解を得なければなりません。その点、有床診療所では経営者が臨床現場に応じて即座に経営方針を決められるので、個々のかかりつけ患者さまの病状に適した柔軟な病床の運営が可能なのです。

また、病院よりも設備や人員基準が緩いため安価に入院医療が提供でき、病院よりも(時に介護施設入所よりも)コストパフォーマンスが高いため、入院が長期化してしまっても病院ほどの医療費は掛かりません。

「治す医療」から「支える医療」への転換期において、病院が「治す」医療を担うのに対し、有床診療所は「支える」医療を担う病床として重要な役割を果たします。

病院とは異なる
「現場主義」
「柔軟性」
「高いコスパ」

病院とは異なる現場主義 柔軟性 高いコスパ

有床診療所の歴史

有床診療所のはじまり

『徳川賓記』によると、享保7年に八代将軍徳川吉宗が貧困者救済のため無料の医療施設「小石川養生所」を江戸・小石川薬園内に設立。小説『赤ひげ診療譚』の舞台としても知られるこの養生所は、日本で初めての「入院できる診療所」であり、「有床診療所」の起源とされています。「小石川養生所」の設立日である12月4日は「有床診療所の日」と制定されました。

有床診療所の設置

有床診療所は、昭和23年に施行された「医療法第1条」により「19人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」として設置され、終戦直後、入院病床の不足に対処するためにGHQが新設しました。その後、日本独自の医療単位として地域医療の中核を担ってきました。地域に密着した身近な入院施設として、急性期はもとより慢性期、終末期医療までを「外来/入院/在宅」と同じ医師が診療するという特徴をもち、高齢者の療養や介護の受け入れから外科系の手術や分娩のような専門的な医療など、多様な医療を提供してきました。

有床診療所の失われた30年

しかし、有床診療所が担う役割の多様性が仇となりました。有床診療所の評価様式が一元化されず、これが有床診療所への理解を妨げることとなったのです。今日でこそ「地域完結型医療」への移行が叫ばれているものの、それまでは「病院完結型医療」全盛の時代。「有床診療所の歴史的役割は終わった」と発言した厚生官僚らの餌食となり、有床診療所が設置されて以来実際には適用されて来なかった「有床診療所の患者収容は原則48時間以内」と定めた医療法第13条を盾に、1985年の第1次医療法改定で、有床診療所の病床は地域医療計画の必要病床数の算定から除外され、正式な入院施設として認められなくなりました。また、この医療法第13条が病院との入院基本料の格差を生み、有床診療所が減少する原因となります。診療報酬上も正当評価されず経営的にも肉体的にも境地に追い込まれた多くの同志が病床閉鎖を余儀なくされました。平成28年時点での有床診療所の施設数は約7600施設、これは20年前の半分以下の施設数です。

有床診療所の再興

しかし、流れは変わりました。全国有床診療所連絡協議会の地道な調査活動と江口成美氏をはじめとする日医総研の緻密な分析により有床診療所の再評価がなされ、その結果、2025年に完成を目指す「地域包括ケアシステム」構築の上での重要性を厚労省が認知するまでになりました。平成26年(2014年)10月1日「医療介護総合確保推進法(第六次医療法改定)」において有床診療所が医療法30条に「病床を持つ診療所」として書き込まれ、有床診療所の役割、機能が医療法で規定されました。この医療法30条への書き込みは、有床診療所の役割を将来にわたり示す、大きな意味を持ちます。つまり、正式な病床として法的に認められた有床診療所は、遂に地域医療計画に参入する権利を得たのです。

産科有床診療所

産科有床診療所image

地域のママ、パパの強い味方。
産科有床診療所について
知っておこう。

産科有床診療所

産科有床診療所image

地域のママ、パパの強い味方。産科有床診療所について知っておこう。

半数近いママが「産科有床診療所」を選んでいます。

「産科有床診療所」とは、19床以下の入院設備を持つ産婦人科医院のこと。総合病院や大病院などに属する「病院産科」ではない「地域の産婦人科」といったところでしょうか。2018年12月現在、全国の全出生の約47%は「産科有床診療所」で分娩されています。「病院産科」が減っていることや出生率そのものの低下も影響していますが、実際に半数近いママが地域のかかりつけ医が居る「産科有床診療所」での出産を選んでいます。

かかりつけ医は、ママのことをよく知っています。

ママひとりひとりの体質や体調の把握は、出産の時以外にも診察を行っているかかりつけ医だからこそできること。長い時間待たされたり、カルテだけを見て判断されるということも少なく、「何かあったらすぐに相談できる」という身体的・精神的な安心感や医師との信頼関係が出産に伴うママの不安や負担を軽減します。

妊娠中も、産後も、ママをサポートし続けます。

妊娠中や出産後の不調にもすぐに対応してくれるのが大きな強みです。産後のケアや困り事についての相談がしやすいこともあり、初めて出産するママはもちろん、第二子以降を出産するママにも喜ばれています。